唯一無二の存在


今日は完全に趣味に振り切れた日記を 笑

今週火曜日、1頭の競争馬が引退した。
2014年の日本ダービー覇者 ワンアンドオンリー 引退間近の調教師さんに初めて日本ダービーの勲章をプレゼントしたそれはそれは優秀なお馬さんだ。日本ダービーを勝った後も、ワンアンドオンリーはたくさん活躍すると皆が思っていた。
しかしダービー明けの初戦は勝ったものの、本番のG1では9着 そこからワンアンドオンリーは長い長いスランプに陥る。2015年3月に海外で3着に走ったのを最後に馬券内は疎か、5着以内に来る事も無くなってしまった。主戦の横山典弘騎手曰く「気持ちの問題」ここまで惨敗が続くと普通なら引退なのだが、ワンアンドオンリーにはなかなか引退できない理由があった。

1つはまだお父さんのハーツクライが現役で種牡馬(お父さんになる馬)として健在な事。この戦績のまま引退したとしても、ハーツクライはもちろんその子供のジャスタウェイまでが種牡馬としてワンアンドオンリーよりいい成績で存在する以上、ワンアンドオンリーは彼等と同じくらいの戦績を残さなければ引退後の馬生が確約されないかもしれない。
もう1つは「ダービー馬」という勲章の重み。日本ダービーを勝つという事はその世代の頂点に立つという事だ。そんなダービー馬が輝きを失ったまま引退だなんて事はなんとしても避けたかった。
ワンアンドオンリーをお世話する人は必死に試行錯誤をした。調教のパターンを変えたり馬に付ける装備を替えてみたり、長く主戦を務めていた横山典騎手から騎手を変えてみたり、、

でも結論から言ってしまえば、ワンアンドオンリーはその後1度も復活の兆しを見せる事はなかった。そして今年11月26日のジャパンカップ16着をラストランに、競走馬生活に別れを告げた。
ラストランとなったジャパンカップ、ワンアンドオンリーは入場の際他の馬とは違う方向→お客さんがいる方に向かって行きお客さんを沸かせた。実は自分が観に行った有馬記念でも、横山典さんがワンアンドオンリーを長くお客さんの前に止めて湧かせていたのを観た事がある。

今思うと、あれは単なるパフォーマンスではなくワンアンドオンリーに教えていたのかもしれない。「ほら、お前こんなに人気あるんだぞ。もう1度頑張ってみろよ」と(実際それで火がつく馬も本当にいる)。

ジャパンカップ当日、ワンアンドオンリーはラストランという事はファンには知らされていなかった。横山典さんはワンアンドオンリーとどんな会話をしたのだろう。3年前のダービー、勝者として走り抜けウイニングランをした東京2400m  レースではいつもは中団に位置するワンアンドオンリーが今日はあのキタサンブラックに果敢に競りかけていった。
横山典さんはワンアンドオンリーをなんとか復活させてあげたいと、一生懸命調教をしたり 普通の騎手ならやらないブラシかけや身体を拭く等の「お世話」をやっていたそうだ。それだけ調教師にとっても騎手にとっても思い入れの強い馬だった。
写真でワンアンドオンリーが鼻を寄せているのはラストランとなったジャパンカップのゼッケン、そこには典さんのサインとメッセージが一言 

「ありがとう、楽しかったよ」

最後の勝利から22戦、勝てないながらも駆け抜け続けたワンアンドオンリーと横山典騎手の関係を知ると 短いながらもとてもとても深い言葉だと感じる。ワンアンドオンリーは正に名前通り 騎手にとって調教師にとって、そしてファンにとって唯一無二の存在だったんだなぁと この一言には本当に色んな思いが込められている。
引退後は無事にお父さんとして北海道で余生を過ごせるみたいだ、長きに渡る競争馬生活  本当にお疲れ様ワンアンドオンリー
(´;Д;`)

毎回レースに出て無事に戻ってくるというのはそれだけでも立派な事、どうか元気でゆっくり過ごしてほしい。
もうG1の出馬表に君の名前が無いと思うと、少し寂しいけどね(°▽°)ありがとう、楽しかったよ。